タイトル未定 1話
陽の光が町を照らし始める穏やかな朝。青年は一輪の花を持ち愛する人の眠る元に来ていた。
「父さん母さん。俺、自分が誰なのか探す旅に出ようと思うんだ。だからごめんな、暫くここには来れないと思う。一段落着いたらまた来るからな。」
青年は柔らかな笑みを浮かべ1人呟いた。
「さて。旅に出るって言っても手がかりが少なすぎるな。とりあえずボラルにでも向かうか。」
彼の名はユノリウス。彼は今日自分の生まれた地を探すため自分の育った町を発つ。
「ボラルまでそう遠くはないな。ロイ、休まず行けそうか?」
ユノリウスは1頭の馬、ロイに尋ねるとロイは目を細め鼻をすり寄せる。
「はは、擽ったいって。よし、じゃあ行こうか。」
ボラル────
ここの特徴といえばこの地域一帯で最も綿の生産が多く有名な村だということ。
「ここがボラルか。お前が頑張ってくれたおかげで昼前に着けたぞ、ありがとうロイ。まずは宿屋を探さないとな。勿論お前も一緒に泊まれるとこな。」
にししとロイに笑いかけ宿屋探しを始めた。
しかし宿屋といっても辺り一面綿畑である。誰かに尋ねようとも人っ子一人いない。
「ん〜おかしいな。ボラルは栄えてないにしろこの時間でこんなに人がいないもんかね。」
十数分歩き回り流石のユノリウスもこの村の異様さに気がついた。